カオスドラマFor

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カチャリ
「に・し・て・も~……」
「ふ~~~~ん……?♡」

どこかしっとりしていた様子はどこへやら。
『忘れてくれ』と発言を撤回するヴルームを前にして、一転してカチャリの表情が意地悪く変化する。

「案外カワイイところあるんですね、ヴルームご主人様?♡」

スマホで口元を隠しながら、からかうように上目遣いにヴルームの顔を覗き込む。

「確かに、このカチャリちゃんのおまじないで病院送りにしてやったご主人様は数知れないけれど……」
「ま、安心しなさいよ。店の外で会ったりするご主人様はいないし」
「あ……でもコーディは別ね。アイツお金の匂いするのよ」
「儲け話見つけたらアタシに教えろって言いつけてあるから、その時はアンタも付き合いなさい」

「それに……アンタはアタシの”共犯者”でしょ。……特別扱いされてる自覚は持ってていいわ」
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カチャリ
(胸さえ見てなければね。スケベ)

ジト目。彼の視線はバレバレであった。
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カチャリ
「―――……」

(言わば、自分の人生の肯定のような)
(こうしろああしろとのたまう世界に反発して、抗って、夢幻への道を歩くことになった)
(祝福し合い支え合うのは、団の仲間たちだけでいい)
(それでいい、それが良いと思っていたけれど……)
(……)

ヴルームの顔を見つめる。

「……ふん。べつに、アタシは好き勝手やってるだけよ」
(中々どうして、悪くない―――)
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カチャリ
「はぁ? 立場逆転~?」
「な~に言ってんのよ、メイドは世を忍ぶ仮の姿なの」
「真の姿は、世界を脅かす秘密組織の参謀だったりしてね~♪」

目元に影がかかり、にやりと片頬で笑いながら言う。

(……ん? 良き領主って何の話?)
(……)
(こいつ、やっぱり―――)
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ヴルーム
「その考え方は分かるわ」
「俺も惰性で生きるより、行動によって生じる不安定さを求めて日々を過ごしたいと思ってたからな」
「こっちにきてカチャリの言動見てさ、こうして生きていてもいいんだなっていう」
「刺激の中にある自身を見つめる人が居て、安心感さえ覚えたんだ」

機嫌良さげな彼女の笑みを受けつつ、自身の感情を述べる。
だが、視線は普通に谷間に行っていた。

「ただ、カチャリが人気メイドだとしたら、それは刺激ではあるかもしれないけど」
「ちょっと、俺としちゃあ不安要素だな」
「俺はご主人様なのに、他のご主人様もいるなんてちょっと考え方が難しいんだよな~」
「まぁ掛け持ちで侍従している奴も居たっちゃ居たんだけど……」
「……忘れてくれ。仕事の邪魔にしかならねぇ事言った気がするわ!」
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ヴルーム
(今絶対谷間から出したよな???)
(俺の見間違いじゃないはず)
(だとしたら今この読込が完了したQRコードは……)
(……ハニートラップの類か?でも俺に対してする必要ないもんな)
(マジなんだ、コイツ。マジ)

カチャリとの連絡先交換という役目を終えたQRコードをガン見。
その様子は真剣そのものであった。

「ご主人様は俺なのに、立場逆転してないか~それ?」
「まぁ、メイドからの呼び出しに応えるのも良き領主の務めってところかね」
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カチャリ
「さて……WIREね、ちょっと待ってなさい」

と、言いながら胸の谷間に手を差し入れてから引き抜くと、その手にはスマホが握られていた。

「ありがと、読み取るわよ」

ピッとコードを読み取り、表示されたヴルームの名前を確認する。

「うんうん、登録完了……っ♪」
「これでいつでも連絡が取り合えるわね」
「いい、アタシの電話には2コール以内に出なさいよ」

ジト目に機嫌が良さそうな笑みを浮かべ、勝手なルールを築き上げていく。

「裏でこういうコト……ふふん、そうね。なんとなくスリルを感じると言うか……」
「非日常感? 刺激のない日々より、なんとなく刺激的な日々を求めてしまうのよね」
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カチャリ
「わっ、と、ちょっ……!!」

肩に置かれた手に重心を傾けられ、慌てながら彼が立ち上がれるよう補助する。

「あのねえ、肩貸す前に一言くらいなんかないの? びっくりしたじゃない」

ジト目で口をとがらせ、小さく抗議する。

「ふ~ん……アンタの地元はもうちょっと涼しいのね」
「羨ましいわ……―――無論、心配ないわ。アタシがつけられるなんてヘマすると思うワケ?」

自信満々に胸を張るカチャリ。
無論、大いに心配アリである。
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ヴルーム
裏口へと視線を移す。
同時に流れてくる夢のある提案。
暑い季節には持って来いの、浪漫溢れる冬を感じさせる彼女の発現に、小さく笑みを浮かべた。

「いーんじゃね?似合ってんだし」
「ぃよっと……!」

掛け声を出しつつ、腰を上げる。
その立ち上がる際、傍にまで寄ってきたカチャリの肩に手を置き、
やや重心をかけて支えにした。
体勢をしっかり整えると、「わり」と軽口をたたくようにはにかんで手を離した。

「持ってかねーよ。俺、工房持ってねーもん」
「暑いのは嫌だよなぁ~」
「こっちの気候は俺ん所よりも明らかに太陽光の当たり方が違うから」
「暑くてしゃーないよ」
「って、そんな話じゃねーか」
「附けられたりしてないよな?同僚に見られたらすぐ噂されんぜ」

離した手を流れるような動作でポケットへと移動させる。
通信端末を手に取り、認証を解くとすぐさま液晶にQRコードが出現した。

「ほい。ID」
「なんか裏でこういうコトすんの、わくわくするよな」
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カチャリ
ガチャリ―――

「どんな改造するの?」
「最近めちゃくちゃ暑いし、でっっっかい造雪機なんかいいんじゃない?」
「辺りを真冬にしてやるの。みんな喜んでくれるかもじゃない?」

メイドカフェの裏口が開き、仕事を終えたカチャリが出てくる。
メイド服の姿のままで!!!!!

「あ……この格好は気にしないで」
「わざわざ着替えるの面倒だったのよ」
「このあと店に寄って、ちゃんと着替えて帰るから」

言いながら室外機の前でしゃがみ込むヴルームに近寄り、ジト目になる。

「ちなみにその室外機持ってくのはナシよ。店の空調がイカれてしまうわ」
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ヴルーム
「この辺の物品は漁ったり回収していないっぽいな」
「流石に身近すぎて足が付いちまうか」

裏路地の背景に溶け込みながら、ポリバケツに腰かけている。
跨って座ったソレに両手を合わせて重心を取りつつ、前後左右に揺れながら周囲を見渡した。

(手を取ろうとはしてたんだよな~)
(意外と流されそうというか、ちょっと押しに弱そうな所あるよな、カチャリ)
(そんな奴がメイドやってたら、グイグイ来る客とかどうしてんだろ)
(ん~、あんまり考えたくはないな)

「……」

ジッと待つことが出来ないのか、バケツから飛び降りる。
建築物に備え付けてある室外機に視線を合わせるようにしゃがみ込み、にらめっこする。

「コイツはファンの部分と冷却モーターが使えそうだな」
「回転機の仕組みは変わってないだろうから、俺でも改造出来そう」

ブツブツと独り言をしつつ、カチャリを待っていた。
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名無しさん
――― メイドカフェの裏路地 ―――
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カチャリ
色々やりやすくなるから―――。

言ってから、妙に意味深な言い方じゃない……?と自分で気づく。

「ち、違うからね!?」
「変な意味に取らないでよ!??!」

よく自ら進んで爆発しにいく女なのであった。
それから時間は進み―――
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カチャリ
「……」

(でも、また手……)

先日の路地裏で引かれた手の感触を思い出し、ヴルームの顔から彼が控えめに差し出した手に視線が移る。

(……で、でもでも……ちょっとくらいなら……)

と、彼の手を取り―――かけて、自分の手を下ろす。

「……あと30分よ」
「これからチェキ撮ったら、あと15分くらいってとこかしら」
「外、この店のすぐ横にある裏路地で待ってなさい」
「アンタの言う通り、外ならこっちも色々やりやすくなるから」
「…… …… ……」
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カチャリ
「は、はぁ!? 二人で抜け出すって、アンタ……!」

思わず大きな声を上げかけてバッと口元を覆い、周囲を見回す。
周囲の客やメイドもこちらを気にしてはいないようだった。

「あ、あのねぇ……アンタ、冗談なのか本気なのかわっかんないのよ……!」
「そもそも、仕事中のメイドを連れ出そうとするご主人様って、なんか、ちょっと……やらしいわ……」

そう言いながらジト~っとヴルームを見やり、自分の身体をかばうように抱く。
隠す腕が豊かな胸元に触れてふにょんと柔らかく変形し、無意識のまま大きく開かれた胸元の谷間が余計に強調されていた。
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ヴルーム
「それとも二人で抜け出すとか」

冗談か本気か掴みきれない、余裕のある笑みでカチャリに視線を置く。
控えめに手を差し出し、「どう?」と誘っていた。
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ヴルーム
「チェキは撮るぞ!」
「あとライブパフォーマンスか。いいな」
「舞踏会とかの洒落た感じよりか、重低音とかシンセとか、電流感じるミュージックの方が好みだし――」

カチャリの反応が大きく変わり、「おっ」と口を開く。
工房の話が上がると「それのことな!」と反応する。

「連絡先知らなくても、俺が客として来る事なんて分かってたんじゃないか?」
「まぁそういう話じゃないよな。オッケー、WIRE交換しようぜ」
「……?」

自身の通信端末を取り出すが、カチャリがその動作に対するアクションを起こさない。
過去を思い返し、似たような境遇を奔らせる。

(あぁ、そうか。貴賎の別の蟠りは何処に行ったってあるもんな)
(『メイド』という身分である以上、『ご主人様』との内通を含んだ時間外接触はご法度)
(そういうところの再現を此処でもしているわけだ)

方向性は間違ってはいないが、勘違いを発生させつつも端末をポケットにしまった。

「外に出りゃその辺の壁も無くなんだろ」
「就労時間はいつまでだ?外で待ってるよ」
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カチャリ
―――それからしばらく。
食事を済ませて食器を下げられた後。

「それでどうすんの、ヴルームご主人様?」

向かいの席に座ったまま、カチャリは楽しげに身を乗り出す。

「もうちょっと遊んでいく?」
「またチェキとか撮ったっていいし、一緒にゲームできるオプションもあるわよ」

あれと、これと。と指を折りながら数え店のサービスを紹介していく。

「ちょっとお金はかかるけど、メイドたちでライブパフォーマンスなんかも―――」

(あれ? ちょっと待って)
(アタシなんか大事なこと忘れて……なんでヴルームに会いたかったんだっけ……?)
(なん……で……―――アッ!!!!!!)

目がカッ!と見開かれ……!

「工房……っ!」
「そうよ、工房!」
「アンタに見せる約束してたでしょ!? でも、連絡先知らなくてどうすればいいか……!」

かと言って、この店内で堂々と連絡先を交換するわけにはいかないのは自明の理であった。
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カチャリ
「……♪」

「美味い!美味い!」とはしゃぐヴルームから返ってくる素直な反応に、口元を緩ませる。

(ふふん、当然でしょ)
(なんたってこのカチャリ様が作ってあげたんだもん)
(”ものづくり”ならアタシの領分なんだから)

「そんなに慌てて食べなくても、オムライスは逃げないわよ」

呆れたように言いながらも、明らかに機嫌良さそうな声だった。
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ヴルーム
(ま、まぁ、いいか!カチャリの顔見てる感じそれが普通っぽいし!)

「いただきます!」

気を取り直してスプーンを手に取る。
彼女の手料理を口に運びながら、幾度も「美味い!美味い!」とはしゃぎつつ、
食事を楽しんでいた。
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ヴルーム
(……貧乏なんかな……)
(違うか。ケチャップ好きなだけか)
(まぁいいや。俺の方は無事(?)だし)
(……?違うか?俺の方にあんまりサービス来てないのか?)
(だとしたら同じぐらいケチャップかけた方が良くないか?)

謎思考。

「……」

カチャリが使用したケチャップボトルに手を伸ばし、フィルムに指を食い込ませつつ手に取る。
自分のオムライスにかけようと押し込むが

プシュー……

ただ空気が出るだけであった。

「……」ブンブンブン!
「……ぜ、全部使い切ってやがる……」

カチャリのリコピン摂取量にただ茫然とする。
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ヴルーム
「……」

先まで食欲をそそる一級品の黄色が合った皿。
其処には一瞬にして戦地の痕跡が如く荒々しい赤が地を塗り替え、
最早食事の愉しみとは程遠い物体が出来上がっていた。

「……」自分のオムライスを見る

「……?」カチャリのオムライスを見る

「……」自分のオムライスを見る

「……??」カチャリのオムライスを見る
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ヴルーム
描かれていくアート。
その繊細な線で描かれた赤い絵具は、調味料としての色合い、そして鮮明さ、なにより舌先の刺激を視覚で訴える。
それでいて描かれた題材は、どれも部品や工具の類であり、
彼女の遊び心が存分に発揮された作品が出来上がった。

「絵上手過ぎるだろ」
「俺の好きなもの……というより」
「カチャリの好きなものじゃないかコレ?」

描かれた題材にツッコミを入れている頃には、既に魔法の準備が整っていた。

(とはいっても、実際俺も機械工具の類は意味も無く弄ってたからなぁ)
(電動工具もいいが、ハンドツールタイプのレンチで六角ボルトを締め付けるあの感覚)
(城下町に遊びに行った時ぐらいしか出来なかったけど)
(カチャリは毎日弄ってんのかな)

カチャリ渾身の伝統芸能が披露されている中、彼は思考に耽っており、
彼女のメイドとしてのサービスをまともに受けていなかった。

「あぁ、サンキューな」
「カチャリの作るオムライス、これ食いにきたからな」

簡易的で粗雑ではあるが、食前の祈るようなジェスチャーを一瞬だけ披露する。

「んじゃ、いただき――」ブボバッッッッ!!
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カチャリ
「さて……」

席へ着くなり、今度は自分のオムライスへケチャップボトルを向け……

ブボバッッッッ!!

「あ~これこれ^^」
「ほら、食べるわよ」

黄色いオムライスがケチャップの海に染まったのだった。
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カチャリ
「さっ、いつもの魔法もかけちゃいますよ~♪」

ケチャップボトルを置き、両手でハートを作って胸元に当てる。

「おいしくなぁれ、おいしくなぁれ―――もえもえ~~……っ♡」
「 きゅんっ♡♡♡ 」

ぽんっとハートが弾けるようなエフェクトと共に、あざとくポーズを決める!
もはや伝統芸能である。(?)

「はいっ♪ これで愛情たっ~~ぷりのオムライスの完成で~す♪ どうぞ召し上がれっ♡」

オムライスの皿をヴルームの手元に押し出し、自分も向かい側の席へと座る。
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カチャリ
「は~い♪ お任せですね、かしこまりましたっ」
「ささっとアンタの度肝を抜いてやりますから、少々お待ちやがりくださいね~♪」

(さて……ヴルームの好きそうなもの、ねぇ)

ケチャップボトルを構えたまま、改めてヴルームの顔をじっと見つめる。

(……確かに難しい)
(まぁ機械関係はたぶん好きだと思うんだけど)
(こないだ、スチームテイル気に入ってくれてる風だったし……ん~~)

数秒悩み……突如としてカチャリの瞳がキラリと輝く。

「―――よし、決めたっ!」

ケチャップボトルを手中でくるりと回し、オムライスの上にケチャップを走らせる!
オムライスには大きな歯車。
くわえて周囲に可愛らしいハートマーク、小さなボルトやレンチなどデフォルメされた工具が散りばめられていく。

「それっ―――!」

ケチャップだけで描かれたとは思えないほど緻密な絵。
完成したオムライスは一種のアートのようだった。
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ヴルーム
「……」

(滅茶苦茶迸ってるぞ、カチャリ……)
(少なからずメイドがしていい圧じゃないが……)
(しゃーない。あんま苛めると工房出禁とかになりかねないし、触れないようにしておこう)

「そうだなぁ……」
「おまかせしようかな!なんか定番の奴とかでもいいぜ」
「カチャリの好きなもんでもいいし、俺が好きそうなもんでもいい」
「俺の好きそうな奴はちょっと難しいか」
「まぁ客の無茶ぶりだと思って応えてくれるなら、嬉しいかな」

目の前に配膳されたオムライスに視線を落とす。
これからどのような絵が描かれるのか心待ちにしながらも、
早く食べたいというウズウズ感も隠しきれていなかった。
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カチャリ
それからややあって―――

「お待たせしましたご主人様っ♪」
「こちら、カチャリちゃん特製の萌え萌え♡ご主人さまの愛情オムライスで~す♪」

『さっきのことは忘れろ』と言わんばかりのドカ快活メイドモードで帰ってくる。
オムライスとシンプルなお茶をヴルーム側とその向かい側に丁寧に置き、ケチャップボトルをさっと構える。

「まだ食べちゃダメですよ~? これからカチャリちゃんが、とびっきりの魔法をかけちゃいますから♡」
「なにか描いてほしいものはありますか? カチャリちゃんにお任せでも大歓迎ですよっ♪」

(忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ……!😠)
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ヴルーム
「……」

カチャリの最後の台詞が、脳内でリピートされる。
何とも言えない気恥ずかしささえ感じる台詞が、やけに色を帯びていた。

「……ん~……でも侍女達には居なかった反応だったなぁ……」
「目線は何処か、俺じゃなくてもっと異なる権力の方に行ってたけど」
「……新鮮だったな」
「バレないように見よう。見るだけタダだろうし」
「変な事さえ云わなきゃいいわけだ」

備え付けのカトラリーを探す。
だが、手元には食器の類は無く

「……これも待たなきゃなんねぇのよね」
「所作、むず過ぎる」

彼女が、自身の好物となったものを持ってくるのを待った。
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ヴルーム
「……💦」

まさか赤面しつつ怒られるとは思っていなかったのか、引きつった表情で彼女を見上げる。
好んで露出の激しいメイド服を着ているものばかりだと彼は思っていたのか、
彼女のその反撃に対してどう対応すべきなのかが分からずにいた。

「い、いや、意図的ではないにしろ、まさか其処まで反応するとは……」
「――って、おいカチャリ~!」

捨て台詞を吐き、厨房へと向かった彼女の背を見続けるだけ。
ため息を一つ落とし、頬杖を付く。

「参ったな。あれサービスと違うのかよ」
「自分の武器を理解してんのかしてないんだか分からんなぁ」
「……機械設計の知識に羞恥心とか吸収されてるもんだと思ったけど」
「なんだ、あーして恥ずかしがる所みると、女の子じゃねーか」
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カチャリ
「……えっち」
最後に弱々しくそう吐き捨て、今度こそ厨房へ向かっていった。
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カチャリ
「――――――っッ!?!///」

バッ!!と注文票を胸元に押し当て、顔を真っ赤にしながら勢いよく上体を起こす!

「や、やってるわけないでしょこんなこと!? メイドカフェは健全なお店なの!!」
「な~~~~にが『ごちうそうさま』よ!」
「いい!! 次に変なこと言ったらケチャップボトルをアンタの口にぶち込んでやるからね!?」

がーっ!と一気にまくし立て、逃げるようにそっぽを向いた。
そのまま脱兎の如く厨房へ駆け込もうとするが……足を止め、肩越しに少しだけ振り返る。
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カチャリ
(フッツーーーーーーにド感想を返されたわ……)
(このカチャリ様の美声であま~く囁いてやったのよ?)
(普通ちょっとくらいドキッとするでしょーが!)
(苦し紛れで言ったキュンガまでイジってきやがってぇぇえぇえぇ~~ん……!!)(全身の血管ブチブチブチブチ
(……ま、でも普通に味は褒められてるし、いっか。嬉しかったし)
(アタシの心が広いお陰で命拾いしたわね)

「ふんっ、とっても嬉しい感想をありがと」
「じゃあオムライス作ってくるから―――」

と、『それ他の客にもやってんのか?』という指摘。
疑問符を頭に浮かべ、ヴルームの視線の先と自分の無防備な体勢を確認し―――
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ヴルーム
「――ん?」

唇の動きが分かる程、空気の振動が耳を覆う。
呼吸も声も、その僅かに消えてしまいそうな旋律を描いて耳を刺激する――はずだったが

「あぁ、美味かった」
「なんてーのかな、こう……ガッツリ行ける感じ」
「胃袋に直接味を染み込ませるようなコクというか」
「いい意味で庶民的な……親しみやすいオムライスだったな」
「キュンガだっけ。アレの効果は絶大だったぜ」

その囁きに対して、狼狽えもせずに真っ当に返答した。
ただし、視線は抗えない程に中央の空間へと引きずり込まれていた。

(エロすぎるな)
(正直気が気じゃねぇけど、理性は保っておかないと)
(そういう店ではないし……はぁ……)

「……それ、他の客にもやってんのか~?」

自制の為でもあり、カチャリの無防備な部分が晒されている事を、
冗談ぽく指摘する。

「飯食う前に腹いっぱいだっての」
「まぁ、合掌の前にごちそうさまってな」
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ヴルーム
(持ってるもんが立派すぎんだろ……)
(西方の遠征時に立ち寄った酒場の……ディアンドルだったか?あの系統の給仕服に似てるな)
(クラシカルメイドにしか囲まれた事なかったけど……こりゃメイド喫茶にハマる奴の気持ちも分かるわな)
(カチャリ、人気ありそうだよな……そう考えるとちょっと――)

もじもじと身を捩る彼女を凝視。形取るその線の縁を瞳に入れ込む。
柔く変形する様を見て満足したのか、目を伏せて「フッ」と謎の笑みをテーブル下に零した。

「酒の類はまた今度だな。俺下戸だから、ちょっと飲んだだけで酔っちまって――」
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カチャリ
「それにしてもー……」

カチャリの目は、ブルームが指さすオムライスの写真。
カチャリ自身が作り、提供した料理。
なんとなく得意な気分になり……

「……気に入っちゃったんですか?♡ カチャリが魔法をかけたオムライス……♡」

瞼を僅かに下ろしながら先の仕返しか、
耳元に顔を寄せて口に手を添え、からかうような表情で甘ったるく囁いた。
座っている彼に対して前傾姿勢になっており、胸元のゆるいメイドドレスではやや支えが弱く、
重力に倣って豊かな双丘がまっすぐに下がっていた。
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カチャリ
「えっ、いいの!? 共食オプション!?」
「カチャリ嬉しいですっ!♪ ドリンクはなににしますか?」
「お車でのお越しでなければ、アルコールの提供もできますよっ♪」

注文票を目にも止まらぬ速さで抜き出し、「オムライス2、共食オプション!」と書く。
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カチャリ
「アンタねぇ……」
「そういうとこよって言ってんのわかる……?」

あまりにもストレートな物言いに、視線を彷徨わせてもじもじと身をよじる。
メイド然とした前で手を重ねるようなポーズだったため、メイド服の仕様上大胆に開いた胸元が自分の二の腕に挟まれ、ふにょふにょと形を変える。

(他の客に取られるかもしれないだの、どーだの)
(それでなんでソワソワしちゃってんのよアタシも!)
(くっ……たぶんヴルーム本人的には全く深い意味もないんでしょうね……たちの悪い……!)(ぉ

と、なんとなくヴルームの所作に目が行く。
妙に手慣れているというか、もてなされることに慣れた人間の雰囲気を感じる。

(……ヴルーム、って―――)

思案にふけようとした時、ヴルームからの注文にハッと顔を上げる。
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ヴルーム
「別に驚かせたくてそうしてる訳じゃないんだけどな」
「ほら、あの場でカチャリの相手をしてもらう事アピールしないと」
「他の客に取られちゃうかもしれないだろ」

案内された席。
自然と上座側に腰かけ、パーカーのポケットから手拭いを取り出す。
手首をやや超えた位置まで、丹念に手元を清潔にしながら、カチャリに視線を上げる。
まるでメニューを、前菜を、パンを持ってこいと言うような、お高い雰囲気が一瞬現れるが……。

「……」

スチームテイルの動きに反応して、目を細めて小さく笑う。
そして自身が放っていた空気が場違いである事を察する。

「……やべ」
「わりぃ、メニューこっちにあんだよな」

冊子が並んだスタンドに手を伸ばし、メニュー表をテーブルに乗せるようにして開く。

「今日は金持ってきたんだよ」
「オムライスと好きなドリンク」
「一緒にどうだ?最近一人で飯食ってて寂しいからさ」

メニューにプリントされたオムライスの写真を指さす。
以前カチャリに振舞ってもらったそれであり、気に入っている様子が伺えた。
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カチャリ
「おかえりなさいませっ、ヴルームご主人様♪」
「ご指名ありがとうございます♪ すぐに席へご案内しますね、こちらへどうぞ~♪」

すぐさま営業スマイルへ切り替え、甘い声で挨拶をしながらスカートの裾をつまんで可愛らしく一礼をする。
そのままヴルームを連れ、端のやや奥まった席へ案内する。
周囲の好奇の視線が切れたところで、ほっとしたようなため息をついて肩ががくっと落ちた。

「ほら、座んなさい」
「まったく、アンタの行動には驚かされっぱなしよ」

そう言いながらも、カチャリのスチームテイルはどこか嬉しそうに小さく振られていた。
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カチャリ
ビュンッ!!!

その速さ実に0.3秒。
抱えていた皿などを厨房へ置いて場に帰ってきて、ふわふわと宙に浮いていたヘッドドレスがすぽんっとカチャリの頭にハマる。
そのままスタスタとヴルームの側まで歩み寄り―――

「ちょ、ちょっとアンタあんま大声で言わないで……!」
「そういう言い方すると変な誤解されちゃうでしょーが……!」

ヴルームの耳元に顔を寄せ、声を抑えながら言う。
実際に周囲のメイドや客から視線を集めてしまっており、汗を浮かべながらコホンと咳払いをしながら一歩下がる。
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カチャリ
ピュンッ!!

メイドのヘッドドレスだけをその場に残し、瞬間移動かと見紛う疾さでその場から消える。
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カチャリ
「―――!」

(ヴルーム……!)
(来てくれるかもしれない、とは思っていたけれど)
(まさか本当にアタシを探して来てくれるなんて―――しかも――そんな――大声、で―――)
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ヴルーム
「居た居た!あ、ごめんな。あそこのメイドと『約束』してて……対応サンキューな」

出迎え口で対応してもらったメイドに「わりぃ」と手でジェスチャーをすると、やや強引に店内へと足を踏み入れる。
そうして手を上げて、左右へと余裕のある速度で振り始めた。

「よ、カチャリ!」
「指名には金と信頼が必要なんだってな。片方持ち合わせてなかったみたいだわ」
「というわけで、ご主人様になりにきたぜ」

ハハハ、と爽やかに笑みを浮かべつつ、バッシング中のカチャリにやや遠方から指名する。
icon
ヴルーム
「え、指名って光画(さつえい)だけなの?」
「あぁ、常連ならまた違うのか」

カチャリの視線の先。
入り口で出迎えてもらったメイドと会話をこなしている。
その内容は特定の人物を探しているような物言いで、
朗らかではあるが何処か困ったような表情をしていた。

「マジか。てっきり侍女達のように代わるがわるで声を掛けられるもんだと思ったんだけど」

そうしてメイドと幾度か会話を交えている最中、視線の端で頂点へと立った機械尾が見え、
そちらに視線が移動すると共に、口角が柔和に緩んだ。
icon
カチャリ
「は~い♪ ただいま向かいま~す!」
「さ、仕事仕事っと―――」

\ カランカランッ♪ /

その時、来店を知らせるドアベルが鳴った。

「おかえりなさいませっ、ご主人様~♪」

反射的に営業スマイルを浮かべ、店の入り口へと振り返る。
そして、そこに立つ人物を目にして、

「―――……!」

カチャリのスチームテイルがピンッと持ち上がった。
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メイド
「カチャリちゃ~ん、3番テーブル下げてきて~!」
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カチャリ
(そういえばアタシたち―――お互いに連絡先知らないじゃない!!)
(ばか!! なにやってんのよも~~~~!)

ツーとコミカルに涙を流しながら過去の自分にツッコむ。

「……ま、工房が見たかったらまた来てくれるでしょ」

肩を落としながら小さく呟き、空いたテーブルの皿を重ねてトレイに乗せる。
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カチャリ
「おかえりなさいませっ、ご主人様~♪」

カチャリはメイド服に身を包み、店内を忙しなく動き回っていた。
料理を運んではケチャップで絵を描き、素の本性をみじんも感じさせない”カチャリちゃん”を演じている。

「―――はいっ、これで愛情たっぷりです♪ どうぞ召し上がれ、ご主人様っ」

完璧な営業スマイルを浮かべて料理を差し出しながら、ふと店の入り口へ視線を向ける。

(ヴルームと一緒に警察官から逃げて、もう数日)
(あいつ、アタシの技師としてのロマンが少しは分かるみたいだったから、工房を見せる約束をしたけど……)
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名無しさん
――― とあるメイドカフェ ―――
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