「ア~~そっカ~~……そういうことデスカ~~……」
彼女に何が分かったというのか。
そう易々と処理できるはずもない情報の濁流を前に、腕を組みながらウンウンとしきりに頷くフィン。
「今の『星遣い』はそういうの使ってるんデスネ~~」
「いやぁ、ワタシはそういう便利なの使わないのが流儀デ~」
自身がかつて『星遣い』であったという大ホラを、まだ懲りずに引っ張るつもりの様子だった。
「それにしても……カワイソウ! より良い未来が見えてしまうナンテとってもカワイソウデース」
「だってより良い未来が示唆されて、常に今が失敗だった~みたいに見えちゃうってコトデショ?」
肩を竦めながら瞼を微かに下ろし、メーベルが持つ懐中時計を見る。
「あぁ、この懐中時計か。これは『星遣い』達のための天体図(ホロスコープ)を覗く為の計測器だ。天体運動と因果波動を同期させる際に発生する時空を探知して――」
「星座の位相変化から確率未来分布図を――」
「極小の時間位相ズレを発生させ、未来の分岐確率を数%単位で調整――」
「内部には魔導歯車と量子水晶、極小のAIチップが――」
「時間位相操作ってのが爽快でな。リューズ(竜頭)を特定角度回転させることで、未来確率を最大0.5%まで補正可能――」
「―――――――」
熱弁。活字が口から渦巻くように飛び出ていき、興味本位で聞いた情報としては脳が拒否する程の莫大な固有名詞が飛び交う。
ただ、その口調は淡々としたものであり、語り続ける本人の顔色に変化は無く、さも「これが聞きたかったんだろ」とでも言うような済ました顔でフィンにひたすら情報を提示していた。
「要は、運命の流量を調整する国家公認技術者である星遣いが、未来を微調整するときに使う計算機だ。普通の時計としても使えるぞ」
「些細な事でも、未来の価値を高める。運命とは天体と連動しているものであり、この懐中時計はその行先を示す神秘的アイテムだな」
「今しがた、君達ダイナーの食事を褒めたが、この計測器によれば他の褒め方であれば未来はより良いものになったらしい」
「たまにこの懐中時計をぶん投げたくなるよ。俺なりに褒めたのにコイツは『違う!』と嘆くからな」
爽やかな笑みのまま、懐中時計を小刻みに振りまくる。まるで中に居る人物を苦しめる為に仕返しをする動作は、さながら子供のようなものであった。