キャネード
「ふむふむ、星遣いとな……おや……?」
彼から発せられる珍しい自己紹介に頷きながらも、不意に鳴った機械音に目を丸くする。そして視線が彼の持つ計測器へ釘付けになった。
「おい下民、それは―――」
と、計測器について追求しようとしたところで彼の態度が悪化し、投げかけられた言葉に思わず笑みが込み上げた。
「くっ―――ははははは!はっはァ! いいじゃないか、あぁいいとも! 実に素直でよろしい!」
「飯がうまい、美女がいる! この僕様が手掛けた店だ、最高の場であることに相違はない!」
上機嫌に高笑いをし、僅かに瞼を下ろして目を細める。
「だがまぁ、僕様をただの”野郎”で片付けたことに関しては、随分と思い切った物言いをしたものだがね」
「ところで……おい美女とやらども、いつになったら僕様に挨拶をするつもりだ?」
首を傾け、3人の従業員へと視線を投げかけた。
「手厚い挨拶、痛み入る。私の星詠みは『メーベル』という」
キャネードの口上に合わせて席を立ちあがる。星屑柄のコートが、ダイナーの装飾に併せて控えめに輝きを保ち、夜空を模したスカーフを巻き直して紳士的な一礼を見せる。その物腰は至って丁寧であり、見下された事実がありながらも決して嫌悪を見せずにいた。
「先日、此処の評判を聞きつけて入店させていただきました。実に素晴らしい接客に加え、飲食についても申し分ありません」
「星遣いとして、貴方が運営する店の運命調整を私が――」カチカチ
「……ん~?」カチカチカチカチ、カチ……カチカチ
計測器の振動は、今までと異なり特殊であった。事細かに鳴り響く針の音は、これまでの微細な鳴り方よりもやや大きく、運命の調律を成さんとする事柄を奏でているようにも聞こえた。
だが、誰にも言語として理解出来ないその針音は――
「なんだ、いいのか」
メーベルの態度を悪化させるだけのものであった。
「失礼、堅苦しい表現技法を野郎に披露しても栓無きことだったな。飯も上手い、美女も居る。最高の場だと思うぞ」