(随分と表情を変える人だ。何千回と賞賛を浴びてきただろうに、一個人である俺の言葉にここまで反応を示すとは……なんだか俺の方が承認欲求を満たされているような気もする)
フィンの事細かに変化を成す表層のパーツに、小さく笑みを零す。
「君の腕前が世に認知されたなら、スターも間違いなしだな。高級ホテルのラウンジで、フォーマルスーツを身に纏ったフィンも夢じゃないな」
高揚を隠さない彼女の弾ける姿に、最早安堵さえ覚える。自身が先まで喉元で繰り広げた感動が、目の前の快活な女性による語りで起きた物語である事に前向きな乖離を感じており、その現実に面白さが滲み出てきたのか「フフッ」と口角を上げた。
「むぅ……ベティ殿の怪力はどうしたものか……」
カウンターの向こう。フィン側の空間に現れてメーベルの視界にフェードインしてきたのは、小学生ほどの背丈しかない謎の和服少女だった。
肩で切り揃えられた淡い紫色の髪。後ろ髪は一束にまとめられ、後頭部でお団子になっている。
謎の和風少女と形容されるだけあり、洋風ダイナーの店内には適してるとは言い難い紫色を基調とした和装。
片肩をさらして肌を見せるように着崩しており、小柄な体格には不釣り合いにせり出た胸元には白い包帯がぐるぐると巻かれていた。
極めつけは腰の帯に差された一振りの小太刀。ここは飲食店。食事を摂る場である。そこで帯刀する謎の和服少女。なぜなのか。
「フィン殿、今宵も閑古鳥が鳴いておるようですね。店番は拙が代わりまする、どうぞ休息を―――」
と、フィンに話しかけていたところで、メーベルの存在に気づいてぎょっと目を見開いた。
「あ、お客人……! ちゃ、茶の”さぁびす”はいかがでございますか。いらぬ節介やもしれませぬが、酒精を召されるのであれば、茶も一緒に……ええと、”あるこぉる”だけ摂取するのは、身体に障りまする」
メーベルがカクテルに興じている様子を見て話しかけながら、カラコロと下駄を鳴らしてカウンターに近づいてきた。