カオスドラマFor

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ミズヒキ
「変わった、変わったお土産かぁ……確かに、定番とかありきたりな物だと面白くはならないわね、しかもトロイメ団ってなんというか、そういう集団だしね。何か考えておこうかな」
顎に手を当てながら中空を見据え、お土産になりそうな物について考え込む素振りを見せる。が、心配するような台詞をの後、元気たっぷりに去って行くユハルへと軽く手を振り返し
「あっ、いや本当に心配はしなくていいから!元気だから私もこいつも、別にそんな困った事も無いし。またね~~」
「……と、で」
こちらに視線を向けるエクトルに対し、大きくため息を吐いて見せ……
「確かに新世界で仕事してた頃程、やかましくて元気が有り余ってる様子には見えないけど……あんたの場合元気無い位で本当に丁度良いから、そのままくらいで丁度良いわ」
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エクトル
「まあ、その努力を否定するつもりは無いけれど……一歩進んだその道の先は夢幻の彼方よりずっと遠い事は分かっているのかしら……そっちのトカゲなら好きにどうぞだけれども」
「でもこのお菓子はちゃんと受け取っておくわ……へえ、餡を挟んだ和風のクッキーといった趣かしら?センスはいいのよねぇ…」
興味深げにお菓子の箱を眺めていたが、去って行くユハルへと気の抜けた手振りを返して見送った後、そっとミズヒキに顔を向け
「……ねえ、私ってそんなに今元気無いのかしら。勿論、少し気落ちしているのは事実ですけれど、まさかあんなに能天気で気の抜けた方にまでそう見られるなんて…」
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ユハル
「あっ、エクトルさんはお菓子お好きですか?良かったです!よっし、好感度アップ!ハーレムの道も一歩から!」ガッツポ
「やった!!ミズヒキさんは色んなとこに行きますからね~、変わったお土産楽しみにしてますよ!せっかくだから、その土地ならではのやつで!」

「……?」
二人してあまり触れられたくなさそうな様子に首を傾げる
「まぁ付き合いの長いお二人ですから、共通する何らかの事情があるってことなんでしょう!ではいったん胸の内に留めておきます!」
うんうん、と頷く

「ではでは、他のみんなにも挨拶してくるので僕はこの辺で失礼します!またお相手お願いしま~す!!」
手をぶんぶんと振りながら走り去っていく
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ミズヒキ
「喧嘩って程でもないから大丈夫、どうせダメージなんか無いしこいつはもう昔っからこんな感じだし。ああ、ごめんなさいね、丁寧にお土産なんて……私も今度何かァ!?」
エクトルに強引に菓子箱を奪われ、驚きと呆れを露わにしながら諦めて菓子箱を譲り
「……今度、西の方に行くから何か持ってくるわね。あちこち出掛ける仕事の割に、団の皆にお土産なんていつも用意してなかったし…あっ、あと”…”は突っ込まないで、本当に。いや、その、のっぴきならない事情と思ってくれていいわ。間違っても書き方の表現の幅が狭すぎるとか思わないで」
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エクトル
「あら?いいじゃない!!一緒くたにされるのは少し気に食わないけれど、こうして私に、と渡してくれるのはポイントが中々高いわ!!お菓子ね、成程……貴方見る目はあるわね、何かと……後でコーヒーと一緒に頂こうかしら」
ぱっ、と表情が明るくなり、半ばひったくる様にユハルからお菓子の箱を強奪。
まじまじと箱の裏等を眺めながら見定めるが、ユハルの言及に対してはばつがわるそうに目を逸らし、
「あ、あのね……そ、そこはメタ的にというか……いや元気よ?少し落ち込む事があるだけで
私はいつも元気で……”…”については色々とふかぁい事情がね…?」
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ユハル
「あっ、お二人とも喧嘩はやめてくださいね!将来僕のハーレムに加わるかもしれない大事な体ですから!」
「あっ、そうだ。はい、これ今回の旅のお土産です!団長たちには別のお土産あげたので、これはお二人で仲良くどうぞ!!」
"きぬの清流"と書かれたお菓子の箱を取り出し、ミズヒキに渡す
「あ、でもなんかお二人とも元気なさそうですけどお菓子食べても大丈夫そうですか?お腹痛いですか?なんか"…"が多いですよ"…"が!」
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ミズヒキ
(こ、こいつ……押し切って来る、価値観が違う……エクトルもこんなんだし私は田舎者だし、そしてここはトロイメ団…………何がスタンダードなのかわからない……ここが狂気のソドム…?逆に私がまともじゃない……??)
「と、とりあえず私はハーレムはお断りの方向で……そっちの女ならどうぞご自由にして構わないけれど、まあ、そういう事で。うん、私がフラフラしてても私の事だけ見てくれるくらいの人じゃないと嫌だし……いやこれもこれでまあまあ酷い気がするわね……まあいいか…‥」

自分で言った台詞の身勝手さに自分で軽く引いた後、木刀を振り回すユハルを見定め……
「う~ん、魔術はともかく剣術は分からないけど……へえ、まあ、そう……うん……」
……なんとも微妙な相槌をうつ
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エクトル
「いったっ…!?肘?肘打ちしました?今……!」
ミズヒキの手をバシン、と…とりあえず一発叩く。そして手を自分の腰の後ろに回し

「まあ見る目だけはあると言って差し上げますが、確かに私は女神に相応しくはありますが……いやこれ平行線ですわね?とにかく、わたくしそんなに安い女ではありませんけれども。異世界転生っていうのも……」
「いや、でも聞いたことがある様な……アレ噂の範囲かと思ったけど"マジ"なのかしら……ま、とにかくその細い腕と弱弱しい剣の振りではまだまだですわね?」
(………いや、しかし…なんとなく腕が立ちそうな雰囲気は感じるのですけれども、この素振りからそんな風にはとても……気のせい…?)
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ユハル
「またまた、何をおっしゃいますか!僕のハーレムは全員がメインヒロイン!全員が僕の女神様!!崇めて奉りますとも!!エクトルさんはそれにふさわしい女性です!!」
内容的に褒めてると言って良いのか微妙な誉め言葉をエクトルに浴びせかける。エクトルの様子と正反対にどこまでも異様に前向きだ
「さぁ~~~……女心は複雑で僕にはよく分かんないですけど?でもまぁそのうちそうなるでしょう!だって僕主人公ですからね!異世界転生ですよ!異世界転生!」
ミズヒキの正論も一切響いた様子無し。どうやらそもそもハーレムと言うものを後ろめたいものだと認識していないようだ?
「それに、僕は本気出したら結構強いんですよ~!剣術でも魔術でも、こっちの故郷じゃ結構知られたもんなんですから!」
木刀をぶんぶん無邪気に振る様子からは、その言葉通りの実力を垣間見ることはできないが……
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ミズヒキ
「あっ、大丈夫、そう、ね………怪我は無さそうで良かった。でももっと気を付けないと行けないわね……そうよね、私の尻尾……重いからね……ごめんなさいね、これに関しては…」

すっ、と尻尾を下ろして頭を下げるが、その後"それはそれとして"と言わんばかりに顔を上げ

「まあ、人をトカゲ呼ばわりしてくるそこのクソ女と違って私は魅力的で賢くて綺麗なのは間違いないから、その誉め言葉はちゃんと受け取らせて頂くけれども……堂々と股かけ宣言して来られても"はい分かりましたお友達"から…とはならないでしょう……?」

少々引いた様な声音で、やっぱり脈の無さげな返事。そしてエクトルに対して軽く肘打ちをかまし、
「いや、だからあんたそれ言い方をもうちょっと……罵倒が入らないだけマシに……えっマシになってこれ……?しかも急にヘラらないでよ……面倒くさいわね……」
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エクトル
「どうやら?認識の所からまず間違っているようですわね…………だって主人公は、このわたくしなのですからね……!」

ブロックした手を離すなり、突然髪をかき上げ自慢の角を撫でる様なジェスチャーを行って見せ、更に輝くドヤ顔へと顔面を変形。さらに口を開き……

「まあ?今は色々あって"溜め"ですからこうやって言い寄られたりみすぼらしい事を……していますけれど…………ゆくゆくは……」

「ゆくゆくはどうしよう………」
少々悲惨な落ちぶれっぷりと未来への悲観に声音と視線がどんどん下方へと落ちていき、挙句の果てに口から出て来たのは
「でもハーレムはその他大勢になってしまうから嫌ですわ……前提として私を立てて崇めて持ち上げてくれる方で無いと論外ですわ……しかも弱いし……」
そんな、余計な一言の付いた脈の無さげな一言であった。
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ユハル
「うぅ~~~」
ブロックされて腕をじたばたさせる

「もちろん!だって僕主人公ですから!!」
屈託のない何一つ疑っていない笑顔で答える
「ミズヒキさんもエクトルさんもとっても素敵な女性なので、むしろ僕しか釣り合わないまであります!!だって僕主人公ですからね!!」
にぱぁ~~~っと華やぐような笑顔のまま自分を指差す
「なのでぜひハーレムに!!絶対後悔させません!!幸せにします!!いえ、なります!!確定的に!!だって主人公ですから!!」
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エクトル
「う、う~ん、確かに、見た所骨が折れたり内臓が破れたりという風には見えませんわね……脆弱にしか見えないお身体にしては、凄く、お元気の様で……」
平然と立ち上がるユハルの身体を検分する様に眺めながら、何かを察してミズヒキをそっと真横へとずらして待ち構え……

「はいストップ、ストップですわ。」
両手を伸ばし、抱き着いて来るユハルの両肩を押す様にブロックを敢行。そして少しの逡巡の後口を開き…
「今、そこのトカゲはともかくとして、この私を値踏みしましたわね???そのリアクションの軽さと体重の軽さと同じくらいのその軽薄さで、この私と釣り合うとでも???」
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ミズヒキ
「いやリアクションも軽っ……!?は、派手に吹っ飛んで……たけど、案外、大丈夫……?その見事な一撃って誉め言葉にも喜ぶべきか分からない…!!」
最早どう反応すればいいのかわからない、そんな困惑と驚愕を顔に出しながらそっと自分の尻尾に手を添え、エクトルの方に行くユハルと彼女を交互に見て
「あー、まあ、うん……そう……」
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ユハル
「────いやぁ~さすがミズヒキさん!お見事な一撃、ますます惚れました!」
「あ、お二人ともご心配ありがとうございます。ご迷惑おかけしまして~」
ボロボロの身体ですっくと立ちあがる。確かにボロボロなはずだが てへっ☆ くらいのリアクションだ……
「そっかぁ~まだ駄目かぁ、やっぱりふらふら旅に出てるからあんまり好感度が上がらないのかな?ミズヒキさんがまだ駄目なら……」
ぶつぶつ言いながらミズヒキとエクトルを交互に見る
「あぁ~やっぱり痛いっ! エクトルさんっ、介抱してくださ~い♪」
わざとらしく言いながらてててーっとエクトルに抱き着きに行く
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エクトル
「え?いや…………軽っ………」
ミズヒキの(意図しない)尻尾攻撃の破壊力はある程度想像していたものの、生まれつきのフィジカル強者であるエクトルにとってはその被害は完全に予想外だった様で、すっかり呆気に取られていたが……

「あっ、いや……そう!そうね!いや人呼ぶ前にとりあえず様子を……お、折れてますか?生きてますか……?」
ミズヒキの後ろをついていくように、恐る恐るユハルの様子を伺っている
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ミズヒキ
「あっ、ごめ………えっ、そんな、そんなに!?確かに重いかもしれないけど、うっそぉ!?ちょっ、大丈夫!?」

想定外の大惨事に思わず目を見開き、派手に吹き飛んだユハルへと駆け寄る。
その尾が尻から常に伸びているが故の、質量への無自覚さが生んだ悲劇へと。

「いや、凄い音したし、感触が随分軽かったけれど……えっ、ちょっ、エクトル!!人呼んで!!!」
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ユハル
────太……! 長… 避…… 無理!! 受け止める 無事で!? 出来る!?

           否                死

────メギョァッ!!!
「ぐほぉへぇぇぇええええええええええっ!?!?!?」
ミズヒキの尻尾が直撃し、ユハルの胴体がまるで骨などないかのように折れ曲がり吹っ飛んでいく
バキッ!! ドゴッ!! ガスッ!! メキィッ!!   シュゥゥウウ……
周囲の物を巻き込みながら吹っ飛び転がっていき、壁にぶつかって止まる
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エクトル
「ふむ、成程確かに火が強かった気がしますわね……普通に調整できますのねこれ、小さくて簡便に見えるけれど、意外と機能的な……あっ」

「あらごきげんようユハルさん!しかしハーレムと言うのはわたくし余り好みではなくてですね、ですがその意気は嫌いではありま……あっ、ちょっ」

座ったままの体勢。ブン回るミズヒキの尻尾が目に入るが、最早何も出来ず……そっとポットだけを持ち上げる様に回収して
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ミズヒキ
「だぁからそんな適当に……っていうかこんな所でっ……あっあっ火強ッ!?湯沸かすだけなんだからちょっと抑えなさいよ!ポットから火がはみ出してるじゃないあーあー……!」

見るに堪えなかったのか、エクトルとバーナーの間に強引に割り込んでは火を調節し……

「これ位で良いのよ火の強さは……まあ、いいや…とりあえず点検はOK……ガス管は後で買い足せばいいかぁ……火も止めたいけど、仕方ない……これくらいなら沸かsうっわっ!!来た!!!っちょっ、あぶなっ!!!」

突っこんで来るユハルの足音と絶叫が耳に入り、瞬間的に身構える。
しかし、『火の用心』という基本にして最重要の警句が骨身に沁みているが故に、即座にバーナーの火を消し、振り返ってユハルを避けようとした、その刹那————

―――――ブ ン ッ !!

ミズヒキの自慢でもある、鱗に覆われた尻尾……太く、長く、重い"それ"が、ミズヒキ本体の円運動に合わせ、遠心力で鞭の様に"しなり"、ユハルの身体に向け、意図せず横薙ぎに叩き付けられる!
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ユハル
────ダダダダダダダダダダ……
誰かが猛ダッシュする音が辺りに響く。それは二人の居るところに向けて近づいてくる……!
────ダダダダダダダ ダ ダ ダ ダ ダ ダッ!!
「ミズヒキさぁ~~~ん!!エクトルさぁ~~~ん!!」
天真爛漫な笑顔で両手を振って近づいてくる少年の姿。それはどこか微笑ましくもあったが……
「お久しぶりでぇぇぇぇぇぇえええええす!!」
ダンッ!! と地面を蹴り上げ、立っているミズヒキに抱き着かんと猛スピードで突っ込んでくる!!
「受け取ってください僕のラヴ!!そしてハーレムに!!!いらっしゃいませぇぇぇええ!!」
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エクトル
「まあまあ、何となくわかった所ですわ。ここをこうして、こう……」
ガチャガチャ……ガチン!!!

「ほらきた!そしてこのレバーを引けば、構造的に……」ボゥッ!!
「あっ!ほら!着きましたわ!火が!!」

ドン引きするミズヒキの制止も聞かず、バーナーの着火に成功。
ぱっと表情が明るくなり、そのままポットの位置を調整、堂々と湯を沸かし始める。
トロイメ団アパート前の、庭と呼ぶにはあまりにも狭い、ほぼ路上に近い敷地の上で。
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ミズヒキ
「い、いや……………いやいやいやいや、使い方分からないなら言いなさいよ……暇を持て余してるからって、あんたが点検手伝うって言い出したんじゃない……」

「しかも点検なんだからちょっと火が着くか見るだけじゃないの……?普通……?なんで思いっ切りコーヒーブレイク始めようとしてるのよ…‥」

様子を見にアジトから出てくるなり、
旧知の仲の割に辛辣な、いや寧ろ旧知の仲だからこそか、ドン引きした様子でエクトルの正面に立つ。

「それ割ったり折ったりしてないでしょうね、ガス缶もそれOD用だしバーナーもそれなりに値が張るんだけど……っというか、こんな、殆ど路上で……ガスで……コーヒー淹れようとしてる……?一旦、とりあえず、それ、手、放して……?」
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エクトル
「………どうも上手くいかないわね……ガスの固定が甘いのかしら。しかし、なんでこんな面倒なものを好んで使うのやら……簡単な調理程度なら、魔術で簡単にやってしまえばいいのに」

トロイメ団アジト前の小さなスペースにて、小さなベンチに座り、小型のガスバーナーを弄り回している。
どうやら、バーナーの上に置いたポットの水を沸かせようと四苦八苦している様子。

「うーん、点検ついでにと安請け合いしたはいいものの、使い方がわかりませんわねこれ、規格が違うのでは……?」ガチャガチャガチャガチャ
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フィン
「あ~あ……ほんっと最悪」
打たれた頬を指先で押さえながら、うんざりしたように吐き捨てる。
それからメーベルが出ていった扉へ視線を流し……ふっと笑う。
「でもね、今回は不思議と悲観的じゃないのよね。確信なんてないんだけど……それでも今回は、何かが違う気がする」
満天の星屑を散りばめた背中を、薄い期待とともに思い浮かべる。
「アンタが言ったんだからね。いい感じに運命調整してよ、メーベルさん―――」
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「……慣れとうないものでございますな」
深く息をつき、自身の内に渦巻く感情の乱れを落ち着けるように目を伏せた。
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ベティ
赤く染まっていた瞳が元の色を取り戻す。すると自分の感覚を確かめるように手のひらを見下ろした。
「……っ、やだね……これ」
身体を微かに震わせ、自身の腕を掻くように抱きしめてながらぎこちなく苦笑いを浮かべた。
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キャネード
「クク……楽しみだ、いくらで堕ちるだろうな。キャネで買えないモノなどこの世にはないんだよ―――ああ、そうだ」
ふと思い出したようにジャケット裏へ手を突っ込み、分厚い札束を抜き出す。
それを惜しげもなく雑に放り出し、フィンの足元に転がした。
「すまないな、頬を打った慰謝料だ。取っておくがいい。 ぬふ、ヌフハ! ヌフハハハハ!!」
微塵も謝罪と取れないような声の調子で言い残し、店の奥へと姿を消していった。
同時に彼女らを縛り付けていた能力が解ける。
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ベティ&フィン&静
「はい」
無機質に無感情に応える。そこに本人たちの意思など欠片も存在しなかったように思えた。
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キャネード
「―――よろしい。いい、実にいい。貴様らはどうせ僕様に逆らうことは出来ないんだ。下民は主人の機嫌を損ねぬよう、静かに控えているのが一番だ」
満足げに鼻を鳴らし、にやりと口角を持ち上げた。
「幸いにも、先の下民は「また赴く」と言った。再訪する可能性は高いだろう……結構。貴様らでも、客を呼び寄せる役目くらいはどうやら果たせているらしい」
「……あの時計……ああ、あの時計は良い。欲しい! 必ず僕様のモノにしたい……!」
「いいか、再訪したらすぐに僕様に報せろ。わかったな」
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フィン
「―――」
キャネードのたった一声で、3人はその場に縫い付けられたように微動だにできなくなっていた。
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「―――」
判断を、意識を塗り潰されるように。
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ベティ
「―――」
彼女たちの瞳に、赤が侵食していく。
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キャネード
「―――《黙れ》」
その一言が発せられた瞬間、文字通りその場の全権がキャネードに握られた。
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ベティ&静
「お、オーナー!!!暴力はダメです!!!!!」
「”おぉなぁ”様、どうかお鎮まりくださいませ。機会はまた如何様にもございましょう、この場はひとまず―――」
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キャネード
キャネードが手の甲でフィンの頬を打っていた。
「僕様の前で下民を逃がすような真似をしやがって……バレないと思ったか」
打った手を一瞥し、露骨に顔をしかめる。
それから懐から取り出した小綺麗なハンカチで、フィンに触れた手をうざったそうに拭った。
「随分と舐めた態度を取るじゃないか」
そう言って不快感を隠しもせず、フィンを見下ろした。
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フィン
「……ハ~イ!」
よぎる嫌な予感を飲み込み、いつも通りの軽い返事をしてキャネードに近寄る。
パンッ
瞬間、乾いた音が店内に響く。
「―――ッ……」
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キャネード
「おや、もう少しゆっくりしていけば良いものを。またの来店を心より待っているよ」
不敵な笑みを崩さぬまま、メーベルの背を見送る。
彼の気配が完全に遠のいた頃、その口角がゆっくりと落ちた。
「フィン。来い」
その声色は冷たく、先までの芝居がかった愉快さはない。
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メーベル
「……」
最中、フィンからの催促が耳元で鳴る。
疑問も持たず、彼女の言葉通り計測器をチェーンごと内ポケットへと仕舞い込む。コートの襟もとを正し、前ボタンを順々に締めていき、見るからに暖かそうな装備へと変化させていった。
(今度話を聞かせてもらおうか)と、目配せをして、また別のポケットから財布を取り出しながら中から札を引っ張り出す。
「チップ代も込みだ」
手のひらで抑え込むように、トンッ、とカウンターテーブルへとお金を置く。値段については詳細を得ていないが、凡そ余剰分である金額だった。
「君達と出会えたのは星の導きがあり、君達が夜空に連なる星光だったから。星遣いとしてもそうだが、個人として、また赴くよ」
「満天に呼ばれていてね。オーナーが居る手前、申し訳ないが失礼させてもらうよ」
仰々しい物言いをしつつ、フィン、静、ベティの順にアイコンタクトを残し、小さく笑みを落とす。
コートを翻し、店の出口へと向かう最中、キャネードと擦れ違う。視界に捉えられる範囲内で会釈を見せ、スカーフを再び巻きなおす。先まで波乱万丈でありながら、一人の男が現れた途端、何処か殺伐めいた雰囲気となってしまったダイナーをあとにした。
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メーベル
「……いい趣味だ。皮肉じゃない」
その瞳の揺れ動きは、常にキャネードへと向けており、彼の権力や財力に対して屈従する事なく目を合わせ続けた。
自身の発言は、少なからず敬意を欠く意図が存分に滲み出たものであったにも関わらず、まずは大笑いをするという彼の行動に、少なからず只者ではないという認識が生まれ出た。
「これだけの召し物を身に纏った伊達男を下民と称する事も、中々思い切りが良いと思ってね。細やかな真似事だよ」
キャネードの高笑いに呼応するように、彼もまた普段通りの余裕ある笑みで応える。
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フィン
「おかえりなさいマセ~オーナーさま♪ いや~お静の言う通リ、空気が一気にキャネ臭くなったのでもしやと思いマシタ~!」
営業用の笑顔を貼り付けたままヒラヒラと手を振りながらキャネードに言う。
それからすぐに視線をメーベルに向け、再び彼の耳元に顔を寄せ―――
「その計測器はまずいわ。早く隠して、ほら早く―――」
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「……お帰りなさいませ”おぉなぁ”様。場の空気が変わりましたゆえ、すぐにわかりましたが……ご挨拶が遅れましたこと、誠に申し訳ありませぬ」
淡々と感情を一切乗せず、平坦な声で告げた。
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ベティ
ベティ
「あ!!!はい!!!おかえりなさいオーナー!!出口は後ろですよ!!!!」
上手に作ったにっこにこな満面の笑みで言い放った。
愛想良く言っているが、問題はその言っている内容であった。
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キャネード
キャネード
「ふむふむ、星遣いとな……おや……?」
彼から発せられる珍しい自己紹介に頷きながらも、不意に鳴った機械音に目を丸くする。そして視線が彼の持つ計測器へ釘付けになった。
「おい下民、それは―――」
と、計測器について追求しようとしたところで彼の態度が悪化し、投げかけられた言葉に思わず笑みが込み上げた。
「くっ―――ははははは!はっはァ! いいじゃないか、あぁいいとも! 実に素直でよろしい!」
「飯がうまい、美女がいる! この僕様が手掛けた店だ、最高の場であることに相違はない!」
上機嫌に高笑いをし、僅かに瞼を下ろして目を細める。
「だがまぁ、僕様をただの”野郎”で片付けたことに関しては、随分と思い切った物言いをしたものだがね」

「ところで……おい美女とやらども、いつになったら僕様に挨拶をするつもりだ?」
首を傾け、3人の従業員へと視線を投げかけた。
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メーベル
「手厚い挨拶、痛み入る。私の星詠みは『メーベル』という」
キャネードの口上に合わせて席を立ちあがる。星屑柄のコートが、ダイナーの装飾に併せて控えめに輝きを保ち、夜空を模したスカーフを巻き直して紳士的な一礼を見せる。その物腰は至って丁寧であり、見下された事実がありながらも決して嫌悪を見せずにいた。
「先日、此処の評判を聞きつけて入店させていただきました。実に素晴らしい接客に加え、飲食についても申し分ありません」
「星遣いとして、貴方が運営する店の運命調整を私が――」カチカチ
「……ん~?」カチカチカチカチ、カチ……カチカチ
計測器の振動は、今までと異なり特殊であった。事細かに鳴り響く針の音は、これまでの微細な鳴り方よりもやや大きく、運命の調律を成さんとする事柄を奏でているようにも聞こえた。
だが、誰にも言語として理解出来ないその針音は――
「なんだ、いいのか」
メーベルの態度を悪化させるだけのものであった。
「失礼、堅苦しい表現技法を野郎に披露しても栓無きことだったな。飯も上手い、美女も居る。最高の場だと思うぞ」
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メーベル
「……なるほど……支配人か……」
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キャネード
「やあやあ、ようこそ。歓迎しようじゃないか」
歓迎など微塵も感じさせない下卑た笑みを浮かべたままカウンターへ近づき、わざとらしいほどの所作で腕を広げて見せた。
「僕様はこの店の主、キャネード・グラニュード。キャネ(金)を愛し、キャネ(金)に愛され! そして……キャネ(金)によってすべてを手にしてきた男だ」
「貴様のような下民でも、この僕様の店に足を運ぶとは……多少は目が利くらしい。実に結構だ。どうだね、我がダイナーは。存分に楽しんでいただけているかな? ん?」
顎を上げ、嫌らしい薄ら笑いを浮かべてメーベルに問いかけた。
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「……”おぉなぁ”様にございます」
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ベティ
「あの人はこのお店の―――」
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フィン
「客なんかじゃないわ、もっとたちが悪い―――」
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