カオスドラマFor

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シグ
「優秀な助手、ねえ」

先までのてんやわんやな状況を思い返し、なんとも言えない顔で肩をすくめる。

「保護者にでもなった気分だったが……ま、役に立ったんならいいさ」

ふっと笑い、彼女の感謝に軽く手をあげて応える。
調合室の片付けを終えて出ていこうとするカリスタを見ていたが、
『酒を提供する』という言葉にぴくりと反応した。

「房に帰って一眠りしようかと思ったが」
「酒を奢るときたら話は別だな」

やや口角を上げながら、カリスタの後を追う。

「行こうぜ。お前と飲む酒はうまい」
「今回は普通に酌してくれよ、先生サマ」

わずかにからかうようなニュアンスを含みながらも楽しげに言い、
二人で並んで調合室を後にしたのだった。
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カリスタ
「付き合ってくれて感謝するよ、シグ」
「まぁ今回の錬金薬の試薬テストについては、依頼というよりも前回の出来事の帳消し」
「私の感謝だけで済ませておくれ」

調合室の片づけを追えると、普段通りの背格好、袖の余り方で部屋内を歩き回った。

「……さて、今日の分の依頼相談をしなくてはな」
「前倒しで今後の依頼調査に於いても声がかかるはず」
「流石に顔を出さねば困る者もいるだろうし」
「私は酒場に戻るよ」
「君がどうする」
「もし来るなら、飯は奢らんが、酒を提供するぐらいはしてやるぞ」

そうして調合室を後にしながら、シグへと声色を変えて話かけていたのだった。
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カリスタ
「あぁ、だいぶ……」
「服を着た事よりも、君の腕の中に居た事で体温が大分戻ったのだろうな」
「飲料水にまで落とし込んだ氷属性エーテルの氷結作用に対して効果的なのは、人肌の可能性がありそうだ」
「最も、こちらも希釈数値を改めよう」
「実戦投与可能にまで実験を重ねなくてはな」

椅子から立ち上がり、使用したフラスコやビーカーを布巾の洗面所へと投下する。
実験台の本に書いたメモや、逸れた資料などを纏め、白衣を戻した。

「失敗には終わったがこれも成功までの道筋」
「一人でやったら、余計アホな絵面になっていただろうけれど」
「優秀な助手が居てくれたお陰で実りのあるものとなったよ」
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シグ
「こっちから仕掛けてみりゃ歯牙にもかけねぇ」
「ったくよ……まったく大した女だぜ」

身体をよじってこちらを見上げる挑発するような仕草をされ、眉間に指を当ててフイと目をそらす。

「興味なんかあるに決まってんだろ」
「だがこんなとこで手ぇ出すのは主義に反するってだけだ」

開き直るように言い、肩をすくめて見せた。

「高い評価をありがとよ」
「お前の言う通り、ある程度理性でコントロールできる」
「衝動的に襲いかかるなんて真似はしねえから安心しろ」
「……少なくとも、相手が自分から脱ぎ出さない限りはな」
「先生サマよ」

先の事故をしれっと蒸し返しつつジト目を向けた。

「―――まぁいい」
「その様子だと、もうだいぶ楽になったか?」

彼女の腕がぷらんと落ちてリラックスした様子を見て、体調を案ずるような言葉をかける。
カリスタの心の中で苛烈に暴れ回る声には気づく由もなかった―――。
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カリスタ(内心)
(何言うとんねんこいつはぁぁぁぁ~~~~~~~!!!!!!!!)
(フッツーにセクハラやろがい!!!!!!!!)
(正直身長とか知りたくないから正確な値は出せんねん私も~~~!!!!)
(絶対教えるか!!でも余裕ある感じは出しときたいな~)
(見られる分には慣れてきたし……まぁ触られなけりゃどうとでもなるマインド)
(少なからず欲情抑えて助けてくれたわけだし、多少は『大人』の演出をしてやろう)
(感謝しておけよシグ!!!!)
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カリスタ
「え」
「……?」
「胸部の視診でもする気か?」
「わからん。測定したこともないし、測定したからといって」
「私の着れる衣類が増える訳でもあるまい」
「協会のスーツは望む体型に変化するものだった故、制服の概念も私にとっては薄くてな……」

シグのセクハラまがいの発言に対して、淡々と答える。
さも、自身の身体を見られる事に対して然程抵抗が無いのか、
「何をいまさら」とでも言うようにぽかんと口を開けていた。

「フィリカといい勝負じゃないか?」
「ただ仮に採寸して正式な数値が出てきたとしても……」
「聊か教えるのは恥じらいが塞き止めるかな」
「見られたところで、最早例の酒場で慣れたものだし」
「……なんだ?興味でもあるか?」

椅子に腰かけたまま、身体を若干捻る。
動きに合わせて体に張り付いたローブは繊維を鳴らし、胸部の皺がより一層目立つ。
足を組み、首を傾げてシグを見上げた。
幼さを彩った身長に不釣り合いの胸部と、猫のような妖艶な笑み。

「存外ケダモノだったりするのか」
「いやどうだろうな。君は理性が働いている」
「存分に襲い掛かる瞬間などいくらでもあっただろうに、こうして私の体温迄も戻してくれたのだ」
「そんなことはないだろう。そうだろう」

フッと笑ってみせ、握りしめていた外套から手を離す。
袖の余った腕をぷらんと下ろして、リラックスしはじめた。
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カリスタ
「おっつ……」

シグに抱えられ、宙に浮いたかのような感覚に覆われる。
彼の腕の中で伝わる体温が、彼女の表面の温度を僅かでも戻していた。

(やれやれ、此処まで介護されるとは思わなかった)
(誰かを抱える事はあったが、まさか私が荷物になるとはな……)

そうして腰かけた椅子で、彼に身を委ねて衣類を着用していく。
最後の一枚、彼の外套が優しく肩から掛けられると、それを手繰り寄せるように肩に手を添えた。

「気の利くことだ」
「そして幾度、君の前で醜態を曝せば気が済むのやら……」

自虐的に微笑みながらも、何処か楽し気に口角を上げ、
シグを見上げながら外套をぎゅっと握りしめた。
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シグ
「……」
「にしてもお前、さっきの―――」

じ……とカリスタの顔と、ローブと外套に包まれてなお主張する彼女の胸元を見つめた。

「ブラかなりデカかったな。何カップなんだ」

シグから飛び出たのは、これまでの気遣いも台無しにしかねないデリカシーの欠片もない発言だった!
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シグ
「はぁぁぁあぁあぁあぁあん……!?!」汗汗汗
「き、着せろだぁぁぁあぁあぁあ……!?!」

素っ頓狂な、唸るような声を絞り出して大量の汗を顔全体に浮かべた。

「ったくこの野郎……暑いだの寒いだの忙しいヤツだな……!」
「お前面白すぎるんだよ……!」

さすがに戸惑っていたが、腹をくくったのか彼女が落とした衣類を拾い上げる。

「もう見ない努力はしねえからな」
「ちょっと動かすぞ」

身をかがめて彼女の膝元に手を差し入れ、そのまま掬い上げるようにお姫様抱っこする。

(軽……)
(体重の2割くらいは胸に持ってかれてんじゃねえか…??)

カリスタを軽々と持ち上げたまま椅子まで運び、ゆっくりと座らせる。

「座ってな。立ったまま震えてるよりゃマシなはずだ」
「手ぇ借りるぞ」

座らせた彼女の腕を持ち上げてローブを通し、ひとまず服を着せ終えたのだった。

「これも羽織っとけ。今日は1日待機だったから汚れてねえ」

自身の外套も取り払い、カリスタの肩にふわりとかけて暖を取らせる。
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カリスタ
唐突に訪れる悪寒。
皮膚から浸透しはじめた氷属性のエーテルが、体内へと潜り込み、
彼女の体温を急激に奪っていた。
凍える振動に沿って、彼女の小さな身体のあらゆる部位は小刻みに揺れ、
それらを抑え込むように自身の身体を抱きしめるよう両手で抱えていた。

「――さ、さっ、ざむぃ……!」
「飲料用のエーテルを、体外から取り込んだ影響か……!」
「は、はやく、服を着なければ――」

手元に持っていたローブを着ようと、両手で摘まんで頭まで持っていく。
だが、その手先は悴んで力が入りきっておらず

パサッ

彼女の微振動の摩擦の影響もあってか、力無く床へと衣類が落ちていった。
再び自身の身体の体温を守るように抱きかかえ、その場で立ち尽くしてひたすら揺れ続ける。

「くっ……!ち、力が入らない……!」
「し、シグ、再三ですまない」
「着せてくれ……!!自分では着れる気がしない!」
「多少身体に触れても構わん……!変な所は避けてもらえると助かる――ッッ」

落ちた衣類を拾い上げる事も出来ないのか、ただガタガタと震えて彼が着せてくれるのを待つだけであった。
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カリスタ
「羞恥心に感けて身体に影響を及ぼす事柄を疎かにするわけにはいかない」
「緊急的な生命維持の定め。肌を見せる程度の事、造作もないさ」

先までひょうきんにも熱がっていた人間の台詞ではない。

「他のサンプルが必要だな」

ふわりと舞い落ちてきた衣類が、彼女の頭に着地。
特に退かす事も無く、籠った声で喋り続けた。

「一度の成果で結論付ける訳にはいかないが、基を盤石とした研究の末に待っていたのは」
「被検体の特異体質によるエラーである可能性もある」
「エーテルという概念との相性が、そもそも私に通じていないことだって――」

モゴモゴと服越しに話しかけつつ、一旦ローブを下ろす。

「だがエーテルの相殺関係は自然と説けたようだな」
「これを応用していけば毒消しの類もまた――」

そうしてローブを着ようとするが、
途端に彼女はガタガタと身を震わせはじめた。
その振動は先の暑がっていたものとは異なる。
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シグ
「お、おい!」
ドンッ(!? やわらk―――)
「!! しまっ―――」

腹部に寄りかかってきたカリスタの肩を片手で受け止め、
その衝撃で誤ってビーカーから氷属性エーテルを含んだ液体をほとんど零してしまった。

「冷た―――カリスタ!」
「おい、暴れっ……掴まってろ!」

腕の中でコミカルに叫び声をあげる彼女を慌てて支え、転ばないように肩を抱き寄せる。
彼女の様子が落ち着き、外傷を確認し始めたのを見てから大きく安堵の息をついた。

「ったく……無茶苦茶しやがって……」
「俺は平気だ、それよりお前が―――」

と、カリスタの身体をほぼ密着して支えたままの体勢であることに気がつきピシッと固まる。

「―――……」
「……悪い。は、離すぞ」

腕をどかしつつ、床に落としていたローブと白衣を乱暴に拾い上げてカリスタの頭上に落とすようにパサッと投げかけた。

「とっとと着とけ。大犯罪者に無防備に肌を見せるもんじゃねえぞ」
「で……失敗した原因は分かりそうなのか? 研究はまた振り出しか?」
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カリスタ
「ぐ ゔ お゙ わ ぁ ぁ あ あ あ あ ~ ~ ~ ! ! !」
「 づ め゙ で ぃ゙ え゙ え゙ え゙ え゙ ! ! ! ! ~ ~ ~!!!!!!!!」

本来飲料用であったビーカーの中身。
それが諸に皮膚から投与され、先まで火照っていた身体は治まりを見せていった。

「ひぃ、ひぃ……」
「くっ……エーテル濃度の誤差は許容範囲だったはず」
「あれだけ実験を重ねたというのに……まさかこのような結果になるとは」
「危なかった。君が居て助かったよシグ」
「そしてすまない。ビーカーの中身、君にはかかってなかったかな?」
「濃度をかなり薄めたポーション故、汚れも無く自然と乾くと思うのだが……」

濡れた自身の身体に手を触れつつ、外傷が無いかを確認。
特にエーテルを被った事による怪我はないようだった。
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カリスタ
「飲む!!!」

傍にいるシグへと手を伸ばす。
だがその手先は定かではなく、距離感を掴めていないフラフラとしたものであった。

「おっつっつ……」

平衡感覚も定かではなく、
差し伸ばした手による重心移動、そして解放された胸圧装部の揺れや重しに引っ張られ、
あちらこちらと身体が傾く。
大人しく受け取ればいいものの、一早くビーカーを手に取りたいという思いが故か

ガッ!

シグの腹部に上半身から寄り掛ってしまう。
その衝撃でビーカーから零れ出た氷属性エーテルを含んだ液体が、彼女を覆った。

ヒヤヒヤヒヤヒヤ……
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シグ
\あつい!!!/

「!?!?!?」
「お、ま―――ッ!!」
「なんで脱ぐんだよ!?」

声を荒らげるが、その声色には怒りよりも動揺や狼狽のほうが色濃く出ていた。
カリスタが飛ばした声の通り、実験台のほうへと視線を向ける。
が、その側であらわになる彼女の肢体に意識が根こそぎ持っていかれそうになり、さらに動揺する。

「あ、阿呆が……! くそ、見た目でわかるって言われてもな……!」

慌てて実験台上に並んであるビーカーをガチャガチャと手当たり次第に確認していく。

(! これはひんやりする……)
「これか!? この青いヤツだな!?」

おそらく氷属性エーテルが含まれたであろう、淡い光を帯びたビーカーを手に取りカリスタのもとへと駆け寄る。

「直接飲むのか!? かけるのか!? どっちだ!?」
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シグ
(調合に関する土台……)
(なるほど。ポーションの類はそっちじゃ『アンプル』として存在しているのか)
(それなら薬品の調合にスムーズなのも頷けるが……世界が違えば、理屈も勝手も違うだろうに)
(それに作ろうとしているものだって、利他的すぎる)
(寒冷地で行軍する最大の敵は寒さだ。それを携帯できる薬一本でどうにかできるってんなら……)
(……)
(……金儲けでもしようって腹積もりのほうが、よっぽど納得できるね)

と思いながら、探究心に駆られて本に筆を走らせる彼女を見て微笑む。

「……?」

様子がおかしくなっていくカリスタに疑問符を浮かべた。
そして次の瞬間、それは起こった―――!
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カリスタ
「ちょ、やば!あつい!!あつすぎる!!!」

体内温度が絶妙な上がり方をしている。
彼女の表情から察する事が出来る程のカロリーが消費されている事、
そしてその証拠となる発汗が異常なまでに放出されており

「ち、ちょ……!あつすぎる!だ、ダメだ!!!」

唐突に衣類を脱ぎ捨て始めた。

「あつッ!し、シグ、すまない!実験台に、あつっ!!」
「氷属性エーテルを含んだビーカーがっちぃ~!!」
「見た目で分かると思う!それを私に!」

思考が定まらないのか、シグの視線がある中でも、
彼女は白衣を、剰え紫のローブを潜る様に脱ぎ始める。

「クソ、引っかかる!!あつッ!!今日ボタンの奴にすればよかった!!!」

上へ上へと引っ張られていくローブが途中で幾度も途中経過で伸び、谷や山の形をくっきりと残す。
その都度、ローブの繊維が今にも千切れそうな音を響かせる。
それらが舗装されるように引っ張られると、スポンと宙へ飛び立ち、
同時に開放された双丘がバルンと跳ねるように自由を得る。
張りつめた胸部を支える下着姿で、ひたすら自身の汗を拭い始めた。

「あつい!!!」

それしか言わん。
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カリスタ
「調合に関する土台自体はそもそもとして持ち合わせている」
「ポーションの類は如何せん、私が居た世界では『アンプル』として存在していてな」
「バカ高かったけど」
「まぁ中身まで触れる機会が無かった」
「一から始める探求心とはこうも行動に意味を持たせてくれるものだね」

シグの誉め言葉に純粋な嬉しさを含んだ声色で返す。
手元でクラクラと左右にフラスコを揺らし、グラス越しに水面を眺めた。

「さて、ではでは実験開始と行こうか」

シグの視線も受けつつ、その小さな注ぎ口に唇を添え、
グッと角度を付けて飲んでいく。

ゴクゴク……。

「……ふむ、エーテルバランスとやらに注意しつつ……」
「おや……?随分と即効性があるみたいだ。身体が温まってきたよ」

手元のフラスコを調合台に置き、自身の身体が火照っている事を実感すると、
袖を余らせた手を上げながら、数度縦に跳ねる。

「氷雪地域での行軍用に使う事が出来れば、より効率の良い任務遂行が実現可能だろう」
「同時に人命救助にも繋がるはず」
「……いや……しかし、なんだ」
「熱いな」

語る彼女の顔には、火照ったというにはやや過剰な程に汗が流れ始める。

「これほどまでの発汗は少し異常だな」
「火属性エーテルの割合を釣り合わせる必要がありそうだ」
「メモっとこう」
「その後に汗を――」

探求心が勝るのか、自身の暑さを取り除く事よりも、錬金術の本に筆をまずは奔らせる。
すらすらと手元を奔らせていくが――

「……」
「……ぐっ……」
「あ、あち、あつあち、あち!」
「あつい!!!」
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カリスタ
「そう、そのエーテル酔い」
「私は自らの体内にエーテルという概念を取り込むことは無かった故」
「そもその存在に対する耐性や反応に興味がある」
「体内のエーテルバランスとやらの仕組みも何も分からんが、これも結局感覚的な話らしいからな」
「可笑しいと感じたら頼らせてもらうさ」
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シグ
(錬金術か……ポーションの類のように見える)
(各隊に1人くらいは薬品の扱いに長けたやつがいたな)
(ポーションや解毒剤には随分と世話になったが……)

「試薬テスト……」
「しかも実験台になるのは俺じゃなくて、お前?」

眉をひそめながら、ずいっと見せられた液体入りのフラストを見る。
澄んでいて綺麗な粘液。目にしたことがない……こともない色合いに、フンと鼻を鳴らす。
続けれ飛び出すカリスタの言葉に目を剥いて驚いていた。

「ぶっ倒れたら助けを呼べ、ってなぁ……」
「お前自分の体のことなんだと思ってるんだ」
「正味、あまり気は進まないんんだが……」
「まぁ……引き受けてやる」

腕を組みながら、壁に体を預けてカリスタを見下ろす形になる。

「応急処置の類はある程度は対処できる。現場での介助はまあまあ経験があるんだ」
「ただ、火属性エーテルを取り込むのなら、体内のエーテルバランスが崩れて引き起こるエーテル酔いだけは注意しておけよ」
「……いいか、少しでも異変を感じたら、意地なんか張らずすぐに言うんだぞ」

「しかしまぁ……器用なもんだ。いくら初級レベルとは言え……」
「イチからすべて学んでポーション作成まで漕ぎ着けたのか?」
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カリスタ
「君には『錬金薬』の試薬テストの助手を手伝ってもらおうか」

場面が変わり調合室。
普段のローブの上から白衣を羽織り、
調合途中だった試験管やフラスコが揃えられた調合台の前でシグを呼ぶ。

「実戦及びサバイバル仕様の薬品を作りたくてな」
「前線での戦いの他、こうしたサポートも、強化施術程ではないかもしれないが、役立つと思ったのだ」

片手を腰に当てて、フンッ、と胸を張る。

「スライムを撃退した時に得られた炎属性の魔素を取り込んだ粘液」
「其処に借りた錬金術の初級本の制作レシピを扱い、血行促進を促す飲み薬を生成した」

液体の入ったフラスコをずいっ!とシグに見せる。
中で揺れる粘液は、澄んだ色をしており、綺麗ではあるが薬品感は否めない色合いであった。

「君に飲んでもらう訳ではなく、私が飲む」
「んで、ヤバそうだったら助けを呼んで欲しい」
「君に人命救助の心得があるのであれば任せても構わん」
「先の気まずそうな雰囲気を打ち消す為の頼み事だと思って」
「どうか手助け願えないかな?」

薬を手前に戻し、彼を見上げつつ頭を傾げた。
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名無しさん
―調合室―
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カリスタ
(君が謝る必要性は無い、無いのだが)
(ふむ、随分と誠実だな。責任の比重を自ら請け負おうとする)
(王都の出であり、嘗ての地位を追いやられた私に同情したお前だ)
(『冤罪』『無実』『濡れ衣』)
(……仮にそれが本質を纏う感情として君を構成しているのであれば)
(なんともまぁ、優しい話か)

ズリズリ……

顔を上げ、緩やかに瞼を上げる。
シグの真摯な対応の中、目を伏せて気まずそうな彼を見ると、「はぁ」とため息を一つ付いて見せた。

「そうさな」
「いい大人が拗ねたところで可愛げなどあるものか」
「互いに認識を照らし合わせたところで、手打ちとしよう」
「だがそれとは別に……」
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シグ
「……」

(もうこれ以上、知らないフリを続けるのは悪手だな)
(カリスタ自身があの日のことを認めている以上、俺が知らないフリをしているのは不誠実だ)

「……面倒だとは思ってねえよ。驚きはしたけどな、あんな場所でお前が出てくるんだぞ」
「そもそも、マジで事故だったんだ。あのヘルメット野郎が俺をけしかけやがった」
「確かに俺も、女に酌でもしてもらって気分よく酔おうとしたのは事実だが……」
「……お前のことは知らなかった。本当だ」
「結果的にカリスタを辱めるような形になっちまったのは……俺に責任があるな」
「すまねえ、悪かった」

気まずそうに目を伏せながら、カリスタに軽く頭を下げた。

(顔面から言ってでけえ音したけど、デコ大丈夫か……??)(汗
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シグ
「い、いや、違う服とかそんな、俺は―――」

(だぁっクソ、油かよ~~~!)

見事に暴走するカリスタに油を注ぐ。
『白いのもあるんだぞ???そういうことか????』と凄む彼女に例の店での格好が重なり、慌てて頭を振ったのだった。
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カリスタ
「……スゥー……ハァー……」
「……はぁ……」
「すまない……取り乱した……」
「弁明の余地もないが」
「醜態を曝したところで私は自身の名誉を護ろうなどとは普段思わないのだが」
「どうにも変わってしまったようでな……」
「君に見られた、そして君の記憶に刻まれている」
「そう考えると、どうにもむず痒くてな」

ガチャガチャとテーブルに広がった皿をシグ側へと追いやる。
余った袖を上手く使いながら、「食ってくれ」と労うこととした。

「面倒な女だと思ってくれても構わん」
「ただ、私も初めての事だった故、目を瞑ってくれると助かる」
「苦心して言葉を選んだ賞賛の文は、素直に受け取ろう……」

重力に身を任せて、ダンッ!と頭ごとテーブルにぶつける。
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カリスタ
「なんだ???????」

シグの僅かながらの賛美。
普段の彼女であれば、「悪い気はしない」と流す程度の反応を示していたが、
どうやら服を褒めたその言葉でさえ、今の彼女には何か含みを感じさせているようだった。

「今日”の”服??????」
「まるで違う服を見かけたような言いぶりじゃないか??????」
「バラって白いのもあるんだぞ??????」
「そういうことか???????そういうことなのか?????????」

最早暴走中。
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シグ
「……」

カリスタが凄まじい圧をかけ続ける相手―――シグは、さながら蛇に睨まれた蛙のように動けないでいた。
辛うじてもそもそと動く口元は、シグに何の恩恵ももたらしてはいなかった。

(くっそ……何にも味がしねえ……!)
(あの日のことを想起させる振る舞いは何もしてないハズだろ?)
(至って普通に、平然と接してた)
(なのに……コイツ……!)
(禁足地の深層でもこんなプレッシャーは感じたことがねえ……!)

額には脂汗が浮かんでおり、緊迫した空気の中に活路を見出そうとしていた。

(お、女……女の機嫌を取るにはどうすればいい……)
(いや、待てよ……褒める。これだ)
(容姿や服装を褒めれば、大抵は悪い気はしないはずだ)
(よし、いくぞ―――)

「……あー、ごほん」
「その、だな……」

「今日の服も……よ、よく似合ってる」
「バラかよ」(←??????????????????????????)
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カリスタ
その対価として、彼女の財布を開けて用意したであろう料理の数々と、
エールの入った木樽が、テーブルに備えられていた。
彼女が手を付けるにはあまりにも多すぎる。
対面に腰かける人物に、ただただ圧を掛け続けていたが、
他人から見れば何があったのかは予想もつかない程、空気が緊迫していた。
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カリスタ←イルw
「……」

何かを忘れるように、訴えていた。
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カリスタ←イル
「……」

何かを思い出さないように
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カリスタ←イル
「……(血眼)」

何かを言わせないように
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カリスタ
「……」

噂された遠方の席。
普段通りの紫の装い。
不釣り合いな胸部は、テーブルに乗せられている訳では無く、
視線を気にするようにテーブルの縁で隠されていた。
相対する人物への抗議のような何かが発生していたが、
彼女は決して言葉にする訳では無く
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手練れの冒険者
「……」

首だけを動かし、黒騎士の要望に応えるように人物に視線を差す。
遠方の席。
普段のカリスタであれば、依頼書付近のテーブルを使い、
あらゆる冒険者たちの助言を与えていただろう。
だが、今日の彼女は何故かギルドボードから大きく離れた席に腰かけ、
何やら雰囲気がおかしかった。

「……今はやめとけ……」
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赤眼の黒騎士
「その嬢さんは何処だ?」
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手練れの冒険者
「カリスタ嬢の助言によるものだな」
「私も送電公の森林での最適ルートの助言を頂いた」
「月亭の参謀として我々を導いてくれている」
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赤眼の黒騎士
「……若い連中の事、相変わらず好きだよな、アンタ」
「それでいうと、依頼処理……成功率が目に見えて上昇しているってな」
「確かあの坊ちゃんが来る前だったはずだが」
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手練れの冒険者
「少なからず、彼が関与した事によって依頼受注は増えた」
「我々が引き受けてきた依頼が、月亭全体で賄われるよう繋いでいる」
「甘さは在れど、その振舞いは私は好む」
icon
赤眼の黒騎士
「情報屋か」
「だが見たところまだ甘いだろ」
「金儲けしようとしてんのが分かる奴にはもろ分かりだ」
icon
手練れの冒険者
「それだけこのギルドに対する期待が高まっているというところだろう」
「近頃は新入りも増え、依頼処理も潤滑となっている」
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赤眼の黒騎士
「対竜となると危険度は跳ね上がるぞ」
「この規模の依頼、月亭でやる事か?」
「王都や帝都、皇都の騎士団が直々に向かうもんだと思うが」

冒険者の横で、同じ依頼書を眺める男。
黒い装飾を中心とした騎士が、目を細めながら腕を組む。
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手練れの冒険者
「邪竜の眷属共……甲鱗網の魔物が雲海の方で活性化した」
「金床の塔の、竜防衛網を構築した新区画の位置だ」
「脅威と成り得る魔物共を予め殲滅する事」
「それが今回の依頼だ」

受付付近のギルドボード。
幾度もピンで刺された紙片の欠片と、その木材の網目は古びており、
其処に掛けられていた依頼書に手を添えて依頼内容を確認している。
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名無しさん
―欠けた月亭―
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ヴルーム
「……次、会えっかなぁ~……」
「……ま、そん時はそん時」
「意外と気にせず、機械工作の話で盛り上がるかもしんないし」
「この収穫を糧にするか」

先までカチャリが居た位置に視線を投げる。
其処で繰り広げられた会話など、鮮明に思い返しながら、
やや口角をあげてその場を去って行った。
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ヴルーム
「……」
「……」
「……」

やや暗くなってきた裏路地の風景。
その最中に、片手で頭を抱え、苦悩する人間が一人。

「まさか御利益があるとは思わなかったぜ……」
「この手元と顔に残る感触は神に感謝……」

苦悩とはいうものの、意外と役得だった模様。
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名無しさん
―しばらくして―
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カチャリ
「胸揉んだうえに、スカートの中まで見てんじゃないわよっ―――」

「このバカぁぁぁあぁあぁあぁあぁ~~~~~っっ!!!!!!」

およそ真の姿が悪の組織の参謀とは思えない、
情けない怒号が裏路地いっぱいに響き渡ったのだった―――。
icon
ヴルーム
「――」

(メイドの下は、ドロワーズとちゃうんかい)

最早噴火は免れない。
その怒号が来る事を予測しながら、もはや「あ」と口を開く事しか出来ず……
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カチャリ
「うぅん……」

地面に打った腰をさすりながら、ゆっくりと上体を起こす。

「ごめんヴルーム……力加減を間違えちゃったわ……」
「で、でもアンタも悪いのよ? いきなりスチームテイルを握ってきたりする、か……ら…………」

ぴたり、と石になったかのように動きが止まる。
尻餅をついて転んでいる自分の胸元。
おそらく転ぶ寸前のカチャリを受け止めようとしたであろうヴルームの両手が、豊かな膨らみにむにゅんと沈み込むように手が添えられていた。

(ん?)
「…………」
(ま、さか……)

自分の胸に添えられた手とヴルームの顔を交互に見やり、

「―――っ……!!」
(~~~~~~~~~~~~っっ!?!!??!!?!////)

顔面が茹だったように真っ赤に染め上がる。
ヴルームが移動したところで、自分の身体を覆い隠すように右腕で胸を、左腕でめくれたスカートをバッバッ!!!と押さえつけた。
プルプルと……いや、ワナワナと身体が震えており……それは間もなくドでけぇ火山が噴火する予兆であった。

「……あ、アタシもバカじゃないからね……ッ」
「咄嗟に庇おうと思って手を伸ばしてくれたのよね……ッ」
「それは……わかる……ッ」
「礼だって言ってあげるわ……ありがとう……ッ」

「でも―――でもねぇ……!!」
「これだけは、言わせてっ、もらうわ―――!」

すうううっ、と大きく息を吸い込んだ……!
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ヴルーム
「――ツツ……」
「……?」

倒れ込んだ衝撃。
本来訪れるはずの痛み。
顔から倒れ込んだ事から推測される未来は強打であったが、
不思議と無事であった。
「あれ?」とでも言うように目を開け、
自身が無事。それどころか、心地よい空間に誘われている現実が、視覚として飛び込んでくる。

「……」

瞳に映り込んだ曲線は柔く、且つ香りも至近距離で脳を破壊しに来た。
加えて先の倒れ込む際、本能的に手を広げて突き出していたせいか、
両手でそれぞれの円を囲っていた。
そしてその内側に伝わる感触が伝わったところで……。

「――わ、わりぃ!怪我してないか、カチャリ――」

覆い被さっていた彼女から離れるため、バッと後ろに腰から倒れるように移動する。

「決してその意図があった訳じゃ――」

なんとか弁明を、と口を奔らせていたが、
その視線は彼女の体勢に釘付けになっていた。
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